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マニラ国際空港で銃撃、南部の町長ら4人死亡

記事の概要

12月20日、フィリピン・マニラのニノイ・アキノ国際空港で銃撃事件があり、4人が死亡した。死者の1人はフィリピン南部ミンダナオ島のラバンガン町のウコル・タルンパ町長で、同氏は今年5月の選挙で接戦の上、町長に就任していた。

元の記事を読む→ 【2013年12月20日:AFPBB News

ネタ元はこちら

元記事のAFPBB Newsが速報だったようで、内容があまりにも少なすぎて事件の概要がまーったく分かりません。で、しょうがないのでフィリピンのニュースサイトなどを見て、もう少し詳しく調べてみました。ネタ元は下記です。

Rappler:FAST FACTS: Mayor Ukol Talumpa

EPOCH TIMES:Zambo del Sur Mayor Ukol Talumpa 1 of 4 Dead in NAIA Shooting

間違って訳している部分があるかもしれませんので、英語がお得意な方はネタ元の方をご覧ください。

事件の概要

12月20日午前11時頃、ニノイ・アキノ国際空港で、フィリピン南部ミンダナオ島ラバンガン(Labangan)町のウコル・タルンパ(Ukol Talumpa)町長が銃撃された。この事件で町長と町長の妻Leah氏と、町長の親族とみられる25歳の男性、1歳6ヶ月の幼児の合わせて4人が死亡した。

事件が起こったのは同空港に4つあるターミナルの内のターミナル3で、1階到着フロア外で町長らは銃撃を受けた。

目撃者の話によると犯人はバイクに乗った2人組の男で、バイクを運転していた男はヘルメットに黒いジャンパー姿、銃撃した男は帽子をかぶり警察官の制服を着ていた。バイクにナンバープレートは付いていなかった。犯行後2人は南ルソン高速道路に向かって逃走したという情報もある。

町長らは襲撃後すぐに近くの空軍病院に搬送された。

ウコル・タルンパ町長ってどんな人?

ネタ元の記事と町長のフェイスブックのページから町長さんについて調べてみました。

ウコル・タルンパ(Ukol Talumpa)町長

こちらがウコル・タルンパ町長です。写真は町長のフェイスブックページから拝借してきました。個人の趣味サイトですのでお目こぼしを。

お年とか細かいプロフィールは分かりません。フィリピン南部にあるミンダナオ島のラバンガン町の町長さんです。

ミンダナオはみなさまご存知の通り、イスラムがらみで政治が安定せず、フィリピンで一番治安が悪いエリアです。主要都市のダバオ周辺は比較的安全なんですが、西部のザンボアンガ半島とかけっこう危ないそうです。で、ラバンガン町はドンピシャリでザンボアンガ半島にあります。

ラバンガン(Labangan)町

左の地図の赤いマーカを付けたところがラバンガン町です。今年の5月からこちらの町長さんをなさっていました。

実は3回目の襲撃だった!

今回、銃撃を受けて命を落とされたのですが、実はタルンパ町長が襲撃を受けたのはこれが初めてではなく、なんと3回目だったそうです。

1回目は2010年に起こりました。この年にラバンガン町の副町長に当選したタルンパ氏は、その直後から殺人の脅迫を受けるようになりました。そして11月にマニラ市内で車に乗っていたところ、2人組の男に銃で襲撃されました。この時は部下が負傷したものの、タルンパ氏は無事でした。

2回目が起こったのは2012年の9月。ザンボアンガ地方のパガディアン(Pagadian)市で車に乗っていたところ、2人組の男が手榴弾(!)を投げつけてきました。この時は奥様も同乗されていたのですがお2人とも無事でしたが、他の3人が負傷しました。

ウコル・タルンパ(Ukol Talumpa)町長夫妻

そして今日3回目の襲撃に遭い、奥様とともに凶弾の犠牲となりました。他の2人の犠牲者、特に1歳6ヶ月の幼い命が奪われたことに憤りを禁じずには得ません。

ニノイ・アキノ国際空港は危ないのか?

今回の惨劇の舞台となったニノイ・アキノ国際空港ですが、サービスが悪いってことで世界のワースト空港の常連でございます。まず、ターミナルが4つもあって面倒なのなんのって。

ニノイ・アキノ国際空港

左の地図で「T3」って書いてるのがターミナル3です。このターミナル3はフィリピンの格安航空会社であるセブパシフィック航空が拠点としておりまして、4つのターミナルの中では最新のものです。ちなみに建設したのは竹中工務店です。

僕もよく利用するのですが、けっこう便利です。いつもきれいだし、コンビニもあるしネットも使えるし。ターミナル1や2とは全然違います。

しかし、セキュリティが高いはずの空港でなぜこんな惨劇が起こったのか? ターミナル3は3階が出発フロアになっていまして、こちらに入ってくる車はすべて検問でチェックを受けます。車の下とかトランクの中も1台残らず調べられます。ですので、出発フロアに入ってくる車で襲撃ってのは難しいです。

問題は1階の到着フロアなんです。入り口に警備員がいますので建物の中には入れませんが、外までは楽勝で入れます。車はどうかわからないですが、バイクであればちょっと車線を無視すれば入ってこれます。犯人たちはそのあたりを十分知った上で犯行に及んだのでしょう。

フィリピンの選挙は命がけ

日本でも選挙シーズンになると候補者が、「わたくし~、今回の選挙に~、い~の~ち~を~、かけて戦っておりゃ~す!!!」ってな絶叫をいたしますが、日本の選挙でマジで命かけることなんざありません。

しかしここフィリピンでは、選挙は洒落でもパフォーマンスでもなく、冗談抜きで本当に命がけなんです。というのも、選挙のたびに何人も人が死ぬんです。殺人報道はフィリピンの選挙とワンセットです。

相手候補を文字通り消すためだったり、票の取りまとめでもめたり、とにかく当選するためならば何だってする。人の命を消すこともいとわない。それがフィリピンの選挙です。

僕はこの国に移り住んできてからつくづく思うのですが、民主主義って本当に良いものなのかなぁ、って。日本にいるときは民主主義が良いと信じて疑わなかったのですが、フィリピンに住むようになって、少なくとも世の中には良い民主主義と悪い民主主義があると思うようになりました。

いったい何が町長を死に至らしめるに及んだのか。4人のご冥福をお祈りします。